インバウンドフレンドリー奈良を目指そう! 第12回(最終回):「自分の店の一人勝ちでは奈良はよくならないぞ!」

自分の店の一人勝ちでは奈良はよくならないぞ!

第12回(最終回):自分の店の一人勝ちでは奈良はよくならないぞ!

みなさん、こんにちは!
今回で私のコラム『“インバウンドフレンドリー奈良“を目指そう』は、一旦最終回となります。
ちょっと皆さんとお別れ、さみしいですね。私自身が何か冒険の旅をしてきて目的地に着いたような気分です。
さて、いよいよ最終回のテーマでは、お店の集積がいかに観光地で大切かを考えてみることにしましょう。
(前回未読の方は下のリンクから)

集積は認知度を向上する

同じようなお店が集まっていると、その場所が有名になる可能性が高まりますね。大きなところでいえば電気屋街、中華街、小さくて簡単な例でいえば、朝市、フリーマーケット(蚤の市)、骨董市などがあります。
一つのお店が有名店になることで、確かにそこには行列ができます。オンリーワンの商品やフードで一躍有名になることを目指して起業されて奮闘されておられる方もいらっしゃるでしょう。個人で起業するかたは当然自分のことで精一杯ですから出店場所も自分で決めるしかありません。
しかし、奈良には資本力のある方々もいらっしゃるでしょう。ご自分の事業が安定基盤化しておられ次のステップを考えておられる方もいらっしゃるでしょうし、また、リーダーシップを発揮できる方もおられるはずです。なんとか、同じ種類のお店を出されようとしている方々を複数人集め、長屋や、隣通し、近場で集積する場所をつくれないものでしょうか?

世界中のお手本になっているスペインのサン・セバスチャン

観光地で、集積店舗形成が年月をかけて進み、大成功している地域があります。それはスペインのバスク地方にあるサン・セバスチャンという町です。地元の人たちを中心として約30年かけて世界にとどろく「美食世界一」の街を作り上げてこられました。

【図40-1 スペインはバスク地方サン・セバスチャンのバル外観】

【図40-1 スペインはバスク地方サン・セバスチャンのバル外観】

【図40-1 スペインはバスク地方サン・セバスチャンのバル内観】

【図40-2 スペインはバスク地方サン・セバスチャンのバル内観】

この美食の集積地を作り上げた戦略のポイントは、次のようなことだと言われています。[*1]

  1. ミシュラン三ツ星レストラン、料理学校、大学、料理学会などが連携して統一感あるマーケティング活動を展開してきたこと。
  2. 料理界での「料理レシピ非公開」の常識を覆し、店舗間でレシピを共有、世界中の食材や調理技法を取り入れて常に新しい概念の料理を産み出すルールを普及させてきたこと。

これに加え、多くのお店が “ピンチョス”と呼ばれるカナッペのような少量、しかし趣向を凝らしたフィンガーフード(楊枝で刺してあり、手を汚さずに食べやすい)や割安のワイン(どちらもひとつ平均2ユーロ程度)で、立ち呑みスタイルをとっており、お店のはしごをしてもらうことが前提になっていて皆でお客様をシェアしているという事実です。開店時間も夜11時半まで営業しているところが多いようです。

実際、日本の各地でもこれを見習って、「日本のサン・セバスチャンを目指す」[*2] と称して美食の集積地をつくりつつありますね。
奈良は、美味しい食材、料理大学、素晴らしいレストランが揃っているわけですし、腕の立つ気鋭の地元シェフもいらっしゃるように思います。こういうはしごができる複数のお店をなるべく近隣で集積させ、フィンガーフードだけどクオリティが高いものを地酒などとともに手頃な価格で提供できれば、単位時間あたり多くのお客様を回転させることができ、かつレビュー獲得の量も増やせる可能性もあるように思います。
もちろん、インバウンド向けの宣伝キーワードとしては、「日本のサン・セバスチャン」などという言葉を使う必要はないのかなと思いますし、その土地や食材、レシピ(食へのこだわりメッセージ)、シェフの魅力を海外に伝わるようなオリジナリティあるキーワードを考えるべきだと思います。

夜の美しい景観を活かした立地が強みになるはず

私は、昔やっていました仕事で、ヨーロッパに頻繁に出張し、3年ほど駐在もし、この駐在期間は自分で車を運転し、家族と共に歴史ある街をいくつも訪ねて廻って宿泊もしてきました。
今でも目を閉じて浮かんでくる美しい街の情景や思い出の一つに、町の中心地にある広場とその周りにある古い建物がライトアップされ、広場に面している沢山のテラス席のあるお店で静かに多くの人たちが集い合って食事やカフェを楽しんでいる風景があります。

【図41 ベルギー首都ブリュッセルにある歴史地区グランプラスの夜景】

【図41 ベルギー首都ブリュッセルにある歴史地区グランプラスの夜景】

奈良の歴史的建造物や古い町並みの一角で、住民の方々に影響の少ないエリアでこのような候補地があれば、ライトアップと併せた集積地営業が実現できれば、多くの人がゆっくりと過ごし、複数のお店のはしごができる人気エリアを創出することができるのではないでしょうか?

イベントばかりやっててもガイドブックには載らない

最近は、あちらこちらで主に週末ですがイベントが盛んですね。人気の工芸作家さんたちや話題のお店が出店すると聞くと、集客はかなりの数になるようです。これが乗じてどんどん他地域のイベントへ出張されるお店のかたもいらっしゃるようです。
手を変え、品を変え、毎月のように奈良でもイベントが行われています。イベントが悪いと断言はしませんし、しょっちゅうなんかやっておれば、たまたまその場に居合わせる方もいらっしゃるでしょうから楽しんでもらえる可能性はあると思います。但し、現状を観察していますと、イベント実施をいくらやっても、観光地としてのブランド強化を世界へ発信できるような貢献はできていないのではないかと私には思えてなりません。その理由としては、

  1. 毎週必ず同じ曜日、時刻、場所にてやっているようなものでなければそもそもガイドブック(書籍やWEBサイト)に掲載されない為、海外からの認知は全くと言っていいほど得られないからです。例えばヨーロッパの各歴史街区での朝市、蚤の市、または骨董市も、曜日と時間、場所が決まっており、欠かさずやっているからこそガイドブックに掲載され、旅行者も計画に組み込んで狙って訪問できるわけです。
  2. イベントの広報も日本語だけ。英語で発信していないケースが殆どです。イベントであっても、非常に奈良の伝統文化を伝えられるような素晴らしいパフォーマンスや展示が見られるようなもので、かつ、早めに告知がなされておれば、是非その時期に奈良を訪れる海外の方々にも鑑賞してもらいたいと思いますよね。そんな素晴らしいイベントであっても、日本語告知しかなく、全く英語の発信もないのはなぜなのでしょう?伝えようとする努力も見られないことが未だに多いように思います。
  3. イベントは不定期に大勢の出店ありきの催しであるという概念をちょっと横に置いておいて、観光・食事・宿泊をより計画的に連携させる発想が重要ではないでしょうか?理想は、例えば民族芸能的なものをディナーショーのような形で楽しめると、宿泊と飲食消費に繋がりやすく効果が高いと思います。もちろん、これも理想は毎日実施、かつ同じ時刻にやることでメディアを通じて、旅行者の予定に組み込んでもらいやすくすることが必要です。スケジュールが固定していると、旅行会社も、ガイドさんも、お勧めルートを尋ねられた宿泊施設さんも答えやすいですよね。

以上、朝市、蚤の市、骨董市、そしてショー形式の出し物も定期的に実施することで、定番の観光名物としてガイドブック等メディアに掲載されて、徐々に認知が広まっていくと考えます。不定期な“撒き餌”的イベントでは、そのイベント自体と宿泊や食事等消費誘発の因果関係要因が薄く、ビジネス目的に繋がりにくくなります。[*3] そのようなイベントでは人手はボランティア頼みで、入場者数だけを成功指標にしようとするおかしな評価がまかり通ります。

それでも、不定期イベントをやるのであれば、例えばですが、英語表記と基本的英語接客の仕方を学びたい店主の方にその機会をトライアルで与え、前述の集積地での開店への動機醸成のチャンスとなれば、人材発掘・育成の面で観光ポイント形成に繋がっていくようには思います。

【図42 ブリュッセル グランサブロン広場の骨董市】

【図42 ブリュッセル グランサブロン広場の骨董市】

優秀かつやる気のある人たちで集積を

奈良で、良い場所に、皆で集積し、スマートなコンセプトや海外まで含めた広報を実施すれば(サン・セバスチャンは30年かかったようですが)それは新たな観光スポットとして醸成できるのではないでしょうか?私も是非そのような方々と出会えることを楽しみに、できれば協働できる機会があればと願います。

エピローグ

皆さん、長い間私の寄稿コラムをご愛読いただきありがとうございました!
奈良の観光経済の活性化、インバウンド客の適正な受入れと消費促進、満足度向上に役に立つヒントとなれば幸いに思います。
現在、国内向けアドバイジングやコンサルティングのサービス紹介の為の弊法人ウェブサイトを構築中でして、完成の暁には、こちらの方での新たなブログなどで、適宜またインバウンドマーケティング等の情報を発信していきたいと思っています。
観光消費額日本最下位、不泊の奈良の状況を改善する糸口を探したい思いから、この連載はほぼ奈良をテーマに執筆してまいりましたが、是非他府県の方々にもご自分の地域に言葉を置き換えてお考えいただく材料になれば更にうれしい限りです。

当協会では、宿泊施設様、飲食業様、体験ホスト様等のインバウンド対応施策やメディア露出について常時ご相談に応じております。
是非お気軽に当協会のfacebookページ等からご連絡をいただければと存じます。この寄稿のチャンスを賜りました、奈良ネクスト推進協議会様にもこの場をお借りして御礼申し上げます。

では、皆さんお元気で!(完)

[*1] 出典:「地域アイデンティティを核とした持続可能な観光資源の高度な活用プロセス」小畑博正氏(2018)
[*2] 【参考記事】日刊工業新聞 企業リリース 「日本のサンセバスチャン計画第2弾!大塚の人の流れを変えたと話題の 東京大塚のれん街!8月9日~第2区画オープン開始!!」
[*3] 【参考記事】東洋経済オンライン 2017/01/25 木下 斉 地方は儲からない「イベント地獄」で疲弊する

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