インバウンドフレンドリー奈良を目指そう! 第11回:体験ガイドと観光アナリストが奈良を変える?

体験ガイドと観光アナリストが奈良を変える?

第11回:体験ガイドと観光アナリストが奈良を変える?

みなさん、こんにちは!
今回の私のコラム『“インバウンドフレンドリー奈良“を目指そう』では「体験ガイド」や「観光アナリスト」の重要性について考えてみたいと思います。
(前回未読の方は下のリンクから)

体験ガイドとは? 観光アナリストとは?

体験ガイド、観光アナリスト、いずれも何か公的な資格があるわけではありません。[*1]
「体験ガイド」と申し上げていますのは、一般の社寺や観光名所を案内する外国語での案内ガイドとは違い、例えば茶道、和菓子作り、瞑想、陶芸、ネイチャーウォーキングなど、最近インバウンドの方にブームとなってきている文化的な体験を“満足度向上”を意識してガイドするお仕事としてこの回では話したいとおもいます。
また、「観光アナリスト」と申し上げていますのは、観光客の動向、志向をデータやレビューなどから分析し、より効果の高い広報宣伝コンテンツ、手段、ターゲット客の絞込を提案できる能力を持てる方として話を進めたいと思います。(この定義文章は当協会独自のものではありますが、多少のニュアンスの違いはあれども一般的にも十分通用する内容だと考えます。)

【図37 筆者が和菓子作り体験ガイドを務める和菓子屋さんにて】

【図37 筆者が和菓子作り体験ガイドを務める和菓子屋さんにて】

体験ガイド=本当は付加価値の高いサービス!

では、まず文化体験のガイドについてもう少ししっかりと考えてみましょう。前述のような各体験の種類や数が増えていくことがなぜ奈良にとっても素晴らしいことなのでしょうか?
当コラムの第3回目でも、奈良でのインバウンド客の宿泊数が少ないことを挙げてきましたね。奈良に関する情報はまだまだ、海外の方には限られた内容のものしか伝わっておらず、午前中に京都や大阪から移動してきて、昼食は奈良で食べるけれども、その後は夕方まで奈良公園近辺に居て、また京都や大阪に戻る人が圧倒的に多いようです。
こういう方々に、どうしてもやってみたい文化体験をアピールすれば、前泊して朝の体験に参加いただけたり、滞在を延長して夜までいて(もしくは泊まり前提に変更して)頂けたりしてもらえる可能性がでてきますね![*2]

当協会では、これまで体験が提供できるホスト様十数名の方々に対してインバウンド向け体験教室開講のお手伝いをしてきましたが、素晴らしい伝承文化や技術をお持ちの方々ばかりでも、

  • “拙い英語で不満を持たれずにコミュニケートできるのか自信がない”
  • “自分の強みをどうやって表現したらよいのか?
  • 実際のインバウンド向け体験はどういうプログラム構成が良いのか?”

といった点についてはご不安が多く、そのために躊躇されている方が多いのが実態です。

【図38 真言律宗のお膝元の奈良。神仏宿る春日山麓の寺院での阿字観瞑想を解説するホストのご住職(筆者は体験ガイドとして支援中)】

【図38 真言律宗のお膝元の奈良。神仏宿る春日山麓の寺院での阿字観瞑想を解説するホストのご住職(筆者は体験ガイドとして支援中)】

あくまで当協会の考えとしてですが、体験ガイドというのは、単に体験実施の当日に通訳に出向いてホストを支援するだけでなく、できれば上記ホストの苦手なところを支援して、一緒に“インバウンド”に刺さるコンテンツを考えて頂き、それを通じてご自分が話す部分も明確にしていただけるのが理想的だなと思っています。(もちろんこの議論を進めるコーディネートは協会がお手伝いします)
なぜこの部分にホストと体験ガイド両方が関わるのが良いかと申しますと、「このホストさんは、よそでやっている人と比べてどこが飛びぬけて素晴らしいのか?」とか、「どうして奈良でこれをやることがすごいのか?」ということを体験ガイド自身も一緒に考え腹に落としておくことが重要になるからで、むしろ体験当日は、それをホストに体現してもらえれば、体験ガイドは解説部分を、このホストと奈良の文化伝統の凄さに絞ってしっかり端的に強調できれば、多くのことをだらだら話す必要は必ずしもないと言えるからです。[*3]
ゲストは基本的には自分が手や体を自ら動かして体験をしに来ているわけで、長時間講釈だけを聞くために来ているわけではありません。ここが従来の社寺や名所案内の通訳ガイドに求められてきたことと明らかに異なるポイントです。

体験ガイドとホストが収益をシェアできる仕組みが必要

このように、体験ガイドがもっと各ホストさんと密接にかかわるようになっていくと、地域全体のコンテンツも強化できますし、体験ガイドさん自らがホストにゆくゆくはなられる可能性もあり得ます。
当協会は、体験ガイドさん自身が、前述で私が定義した役割によってきちんと仕事として収益を得ていただくことが大前提だと考えております。その為には、ホストさんと体験ガイドさんのいずれもが、そこそこ満足できる収益を得なければなりません。[*4]
その為には、体験そのものの付加価値を高めて、顧客向け単価を上げていく努力が欠かせません。一部の業者や観光系団体は体験毎に存在している市場価格相場より低い単価で募集をかけているところも見受けますので、同一商圏での個人ホストや体験ガイドにとっては脅威となっている場合もあるのではないかと考えます。今一度、奈良全体のバランスをよく考えていく必要があるのではないかと思います。

若い人にこそ観光分析にチャレンジしてみてほしい

さて、観光分析については、まさにこの私のコラムで第1回から頻繁にデータ分析を行い、各々から何が言えるのだろうか?というお話を差し上げてきましたが、ここで申し上げたいことは、ずばりこのようなことができる人を増やそうということを言っています。これをしっかりやれるようになると、地域での季節毎、月毎、年毎、国(言語)ごとの対策の必要性や方向性を絞り込めることができるようになります。これらの情報は前述の体験ホストの方にとっても募集を多くする期間の考慮、プログラムの構成やキャッチコピーを国ごとに考慮することに活用できる有益な情報であると思います。主な分析内容と目的を以下表にまとめますのでご覧ください。現在、大学教育においても観光系の学部や学科が創設され始めていたりしますが、是非従来のCOC+[*5] などの地域創生系の学部も含め、学生の方々にこのような分析業務を経験してもらえるとよいのではないでしょうか?

主な観光データ分析 主に判ることの例
四半期や年単位での国別・県別宿泊者の行動(志向性)把握 いつ、どこから多く来ているの?その時と自社集客数ギャップなどを認識
自治体発表の観光客入込数(宿泊+日帰り)データ 日帰りと宿泊数ギャップの大きい国把握
日、週、月、年単位での国別・市町村別での宿泊者の属性別人数、価格帯、泊数を知る 前年同期と比べた顧客属性、価格帯等の変化を知って販促方法を見直し
レビューからのニーズ発見、および各SNSに常備されている利用ユーザーの属性分析 自施設と競合の課題の違いの認識、取り組むべきこととそうでないことの仕分け
外国語で商品等販促の為のキーワード分析 海外発信で効果的な単語の決定
ターゲット顧客の望む画像コンテンツ、撮影商品等調査 インバウンドが共感する“絵面”の理解

【 図39 当協会で実施している主な観光分析の例 】

地域の観光課題を解決するデスティネーションマネジメント組織に観光分析は必須

デスティネーションマネジメント組織というのは、単独の市町村であろうが、複数市町村や県をまたがろうが、定義した観光圏での観光経済の振興と収入の最大化を目指して圏内の各事業者等と連携し、観光ビジネスの創出と拡大を推進する組織です。その為には、この観光分析を自ら行える力や人材を有し、分析から戦略提案ができる力を備えていなければなりません。
このデスティネーションマネジメント組織を、自分できちんと儲けられる組織にし、首都圏や他府県のコンサル会社やマーケティング会社に原則頼らずとも地元で分析と戦略立案ができるような若い人材が確保でき、彼等がやりがいを持って観光圏経済に貢献できるようになれば素晴らしいことだなとおもいます。

[*1] 通訳ガイドには、“全国通訳案内士”という国家資格がありますが、体験を支援することは技能範囲に入っていないと思います。
[*2] 燈花会などの夜イベントがある時期にゲストから体験予約が入る場合、当協会では欠かすことなくその情報をお出しし、体験終了後でも奈良に残ってもらってイベントを楽しんでもらえるよう推奨をしています。
[*3] 体験ガイドの方には、自分が話すことだけにやりがいを感じるのではなく、是非、体験プログラム全体に亘ってゲストが最高の満足を感じることをプロデュースする喜びを感じて頂けたらと願います。
[*4] Airbnb社はその体験サイト(Airbnb Experience)において、非営利法人が関係する体験の手数料を全額免除する社会貢献プログラムを提供してくれており、当協会はこのプログラムに参加しています。これにより、ホスト、体験ガイド、協会でより多くの利益をシェアする可能性が生まれています。
[*5] 文科省が東京への一極集中と若者の地方からの流出を背景に、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」として推進。事業の目的も「地方の大学群と、地域の自治体・企業やNPO、民間団体等が協働し、地域産業を自ら生み出す人材など地域を担う人材育成を推進」となっています。観光アナリストが地元のブレーンになってくれて、きちんを報酬を得られるようになれば、これはCOC+事業の趣旨に沿うものと考えます。

次回予告

さて、私のコラム連載も次回が最終回の12回目。最後の回も皆さんよろしくお付合いお願いいたします。
次回テーマは、“自分の店の一人勝ちでは奈良はよくならないぞ!”の予定です。
特色ある飲食街や曜日ごとフリーマーケットは海外では、当たり前に一か所に集積して名所化していますが、どうも奈良ではむずかしいところがあるのでしょうか?次回で海外の例も見ながら考えてみましょう。

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