インバウンドフレンドリー奈良を目指そう! 第10回:よい評価とおもてなしは、結局“人“の問題

よい評価とおもてなしは、結局“人“の問題

第10回:よい評価とおもてなしは、結局“人“の問題

みなさん、こんにちは!
この連載も第10回目になりました。
(前回未読の方は下のリンクから)

これまではインバウンドの動向理解の為のデータ等を駆使した分析と、宿泊業様や飲食業様がよい評価・レビューを獲得するためのあるべき業務の流れを考察してきました。
しかし、組織や法人でお店を運営している場合、あるべき業務を現場できちんと流せるようにするには、人のマネジメントやコミュニケーションの質が非常に重要になってきます。
今回はちょっと私の経験談も交え、社員コミュニケーションのマネジメントと異文化理解のお話をさせていただければと思っています。

インバウンド対応におけるコミュニケーションの分類

インバウンド対応におけるコミュニケーションって、誰と誰の間のことを言っているのか漠然としているままでお話を進めるのもなんですので、まずは下図の通り整理をしてみたいと思います。
ここでは、最も複雑なケースとして、宿泊施設や飲食業様の法人組織を想定し、インバウンドのお客様、法人組織の経営者・オーナー様、既存日本人社員、そして新たに採用した外国人社員、以上4者の間での関係を考えてみたいと思います。

【図33 インバウンド客と法人での4者間の関係図(外国人社員起用の場合)】

【図33 インバウンド客と法人での4者間の関係図(外国人社員起用の場合)】

インバウンドお客様への対応

接客においては、お客様への愛想や心証を当然ながら良くしなければなりません。
しかし外国人の方の好き嫌い、接客時の国際感覚などは、「お客様として購入したいもの、食べたいもの、宿泊時に必要とするもの」がある程度はっきりしていますので、世の中に出ている参考情報も多く [*1]、きちんと学んで、気配りをしてあげれば、それほど問題が起こることはありません。日本人経営者や社員から見ても「異文化の壁」はそれほど高くはないと思います。

インバウンドお客様対応の為に外国人社員を起用した場合

こちらのコミュニケーションは、組織の内部でのお話になり、かなり事情が違います。今回私がとりあげたいテーマはこちらのほうになります。
こちらの場合、外国人社員が日本の組織や仕事のやり方にうまくなじめないリスクが生じることがあります。特に小規模組織である旅館や飲食業さんでは、社員1人ずつに広範囲の業務をこなすように求め、繁忙時には現場で相互に業務を補佐し合うこと、そのように気配りすることを当然のように求めます。ましてや、懐石などの高度な料理や材料を説明したりするようなスキルはそう簡単に身に着け実践できるものではありません。
外国人の社員やアルバイト起用にあたっては、図33にあるように、非常に多方向にいろんなフォローやケアが必要になります。
私が実際に担当させていただいたお店でおこった話ですが、外国人社員に接客(ホール担当)をさせたところ以下のような問題が発生しました。

飲食店で、特定外国人社員が注文を間違って受けてしまうミスが多発し、改善しないことを「要領が悪い、学ぶ気がない」と既存日本人社員が評価し、「ミスで迷惑をかけた社員にきちんと謝らない」ことで性格も悪いと外国人社員が評価されてしまいました。

この外国人社員を採用される際、このお店のオーナーさんから、これまで外国人は2、3人使ったことがあるから大丈夫と言われたのですが、どうも日本人職場に慣れている度合いが違い、これまでの方々はコミュニケーション上手な方だったようです。
外国人を採用する際、日本語検定の資格(N1、N2など)でコミュニケーション力を判断するようですが、「日本人職場への慣れ度合い」や前述の「懐石メニューや食材の説明能力」などまではこのような資格では判別がつきません。当然ですね。
結局既存日本人従業員の方々がこの外国人社員の方の性格が問題であるとして報告し、オーナーさんが自ら指導に当たりました。しかしながら「日本の職場でのコミュニケーションはこうあるべき」という説明だけで終わってしまい、外国人社員はオーナーからも見放されたと思ってふさぎ込んでしまいました。仕事を始められてからたった1週間でこんなことになってしまったのです。
私がこの外国人社員と面談をしたときには、もはや手遅れで「もう辞める。自分は四面楚歌だ。自分には飲食業は向いていない。」と涙ながらに決心がついたことを語ってくれました。もう25年ほど前になりますが、私自身も30代のころは、海外で外国人社員と同じ仕事場に異文化理解も知らずに飛び込み、「論理的に筋道を立てて議論さえできればうまくやれる」と思い込んで、リーダーとして日本流のやり方を押し付けてしまった反省もあったので、その“痛みのある”想い出がよみがえってきました。

組織内でうまく異文化と日本人の働き方を共存・融合させるには

前述のとおり、長年日本人職場になじんできた熟練した外国人社員を採用できれば、コミュニケーションの問題発生確率は小さくて済むでしょう。しかしながら最近はインバウンドブームでこのような人材はなかなか見つからないでしょうし、いたとしても給与レベルが高かったり、飲食や宿泊業界での就職を望まなかったりする人も多いようです。
そうなると、臨機応変に業務を補完し合いながらチームとして仕事をする考え方を「知らない」外国人であっても、採用してうまく使っていく方法を考えねばなりません。前段落の事例において何がいけなかったであろうかも振り返りながら、うまくやっていくためのポイントを考えてみましょう。

● まず、経営者・オーナーが自ら外国人と日本人の仕事観の違いを学ぶことから始める。
例えば、ベトナム人の仕事観 [*2] とは、

  • 給与処遇面に非常に敏感で、他所で良い条件を見つけると簡単に高頻度で転職する。
  • 仕事のマンネリ化を嫌う。新しいスキル修得に貪欲。
  • ひとりぼっちよりも大勢で話せる楽しい環境を好む。
  • 非常にプライドが高い。

● 「ここは日本だから合わせろ」ではなく、最初は、上記の国民性から考えられるコミュケーション上の留意点を検討する。例えば、

  • 上記自分の理解を既存日本人社員にも理解させ、最初は歩み寄り合うことから始める(受け入れる日本人側も外国人母国の文化・仕事観を理解する)よう指導する。「素直に謝らない」場合でも決して最初から本人の性格として決めつけることのないようにすることを周知。
  • (ベトナム人であれば、上記に則り)大勢で楽しめる職場の雰囲気やレクリエーションも考える。
  • アドバイスや注意も決して人前ではやらないように努める。
  • 何ができるようになれば、どう処遇をUPするか目標を明確にしてあげる。
  • 日本人と同じような補完的に動く能力を求めすぎない。
  • そして何よりも、オーナー・経営者自らが外国人社員の味方であることを本人に感じさせる。

● “外国人社員とうまく関わる新しい考え方”を取り入れると、今度は既存日本人社員の中から「なぜ効率の悪い人間を入れて高い相場の時間給を払うのか?なぜ自分達が面倒を見なければいけないのか?」など不平・不満を言う方も出てきます。こういう人たちも放置せず、きちんと根気よくオーナー・経営者の方は説得をしていかねばなりません。

以上、少しだけではありますが、外国人社員を組織の中で活かし、徐々に戦力にしていく考え方をご紹介させていただきました。

インバウンド接客・対応に外国語が話せる日本人を採用する場合

さて、インバウンド接客に外国語ができる日本人を採用する場合はどうでしょうか?

【図34 インバウンド客と法人での4者間の関係図(外国語接客日本人起用の場合)】

【図34 インバウンド客と法人での4者間の関係図(外国語接客日本人起用の場合)】

こういう方もなかなか人材難ではあるとおもうのですが、このスキルを持っておられる方には、通常の対面接客に加えて予約時のメール等でのコミュニケーションからレビュー獲得までのSNS等でのコミュニケーションにおいても活躍してもらうべきだと思っています。
私のお付合いしてきた宿泊業様、飲食業様での事例から、これらの業務について外国語が話せる社員の方の適性を見極め、そしてモチベートするポイントは2つあるのではないかと考えます。

  • 外国語ができるだけでなく、旅人の目線を持ち、問い合わせや予約時から滞在時、利用後のレビューフォローまでのお客様の体験を最高のものにしてあげたいという気持ちを持って仕事ができるかどうか(人と接する仕事がそもそも好きかどうか)を一定期間根気よく本人に動機づけながら評価をし、適性を見極める。
  • レビュー獲得がなぜ大事なのか?それを増やしていくための全体のあるべき業務の流れをきちんと説明し、その中で自分の役割の大切さを認識してもらう。

オーナー・経営者の方が上記フォローをしても、「一生に一度の体験を最高のものにしてあげたい」という顧客サービスマインドをお客様一人一人に対して自発的に示せる人でなければ、その方はいくら外国語ができても接客には向いておらず、(以前もお見せしましたが)、下記の図の流れのようなレビュー獲得までの業務をうまくこなすことはできないでしょう。

【図35 飲食業様および宿泊業様のレビュー獲得までのフロー図】(当協会作成)

【図35 飲食業様および宿泊業様のレビュー獲得までのフロー図】(当協会作成)

トリップアドバイザーにおける評価内容の実際

インバウンド利用者の方々が、実際にトリップアドバイザーにポジティブな評価を投稿されているその内容を見ると、多くのケースでは、気配り(attentive)親切(kind)親密(friendly)助かる(helpful)といった要素が非常に重要なことがわかります。(例として下図36参照)
お客様の動きを注意深く見守り、観察して対応してあげれば、このように感謝のレビューとなって返ってくるのです。

【図36 2019年トリップアドバイザーエクセレンス認証取得旅館へのレビュー投稿例】

【図36 2019年トリップアドバイザーエクセレンス認証取得旅館へのレビュー投稿例】

まとめ

今回は、日本人の働き方を最初から全て外国人社員に押し付けず、異文化への理解を少しずつでも深めながら、共に働き、お互い文化のギャップを埋めていく関係を築き上げるべきでは?という提案をさせていただきました。また、外国語での接客を任せる社員には、要は業務単位で自分の仕事かどうかを切り分けるのではなく、お客様にとってよいと思うことを境界なく自分が率先してやることで、結果的にそれがサービスの品質としてお客様に評価され、トリップアドバイザー等でポジティブな評価として投稿してもらえる要因となることを挙げさせていただきました。

[*1] 第4回:インバウンド客は食事場所をどう決めるの?をご参照ください。
[*2] 以下のサイトの情報を参考にさせていただいております。
共栄経営センター様ホームページ「ベトナム人採用を成功させる方法」
MTICホールディングス様ホームページ「ベトナム人の仕事観や雇用する上での注意点まとめ」

次回予告

さて、私のコラム連載も残すところ後2回となりました。
次回テーマは、“体験ガイドと観光アナリストが奈良を変える?”の予定です。
奈良には、日本人のこころの原点や鑑賞価値の高いものに触れる機会がまだまだ多く眠っており、海外の方々が学びたい、自分で体験してみたいと思うものが多いのではないでしょうか?
海外の方のニーズや動向を分析で把握し、マーケティングで伝播させることのできる人材や、お客様に最高の奈良文化体験を判りやすい翻訳でガイドする稼げる人材を増やしていくことを提言したいなと思っております。

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