インバウンドフレンドリー奈良を目指そう! 第9回:日本の個性ある旅館こそ、直接予約で勝負だ!

日本の個性ある旅館こそ、直接予約で勝負だ!

第9回:日本の個性ある旅館こそ、直接予約で勝負だ!

みなさん、こんにちは!
さて、インバウンドのお話もいよいよ宿泊関連のテーマですよ!
(前回未読の方は下のリンクから)

お知り合いに宿泊施設のオーナーさんがいらっしゃれば是非教えてあげてくださいね。
では、最初はこれまでの回と同様、まず国別の訪日客のデータから、彼等の宿泊施設に求める要件を少し考えたり整理したりすることからやってみましょう。

インバウンド客の宿泊施設選定:日本全体

さて、再び観光庁のデータにお世話になります。これまでの回でわかった[*1]、奈良訪問が多い国である台湾、中国、フランス、米国の方々の訪日1回あたりの宿泊関連データを見てみましょう。
1人1回あたりの宿泊費総額は泊数の多い傾向ある欧米の方が大きくなっていることがわかりますね。また1人あたり日本全体平均では1万円/泊を切っております。ただ、これは必ずしも奈良を含め日本すべての地域や宿泊形態での価格競争ありきの状態を意味しているわけではありません。後程奈良、京都、大阪について金額分布を詳しく確認してみて考えましょう。

【図27 4か国の宿泊消費単価と平均泊数(観光客のみ対象)】 (出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018、1泊あたり単価は当協会による追加計算)

【図27 4か国の宿泊消費単価と平均泊数(観光客のみ対象)】
(出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018、1泊あたり単価は当協会による追加計算)

次に日本への1回滞在全期間において利用した宿泊施設を形態別に見ると、当然ながら洋式のホテルの利用度が圧倒的に多いのですが、和室中心の旅館も一定程度利用されていることが判ります。また、有料での住宅宿泊(民泊)の利用頻度も無視できなくなってきており、米国人では旅館利用に迫ってきていますね。[*2]

【図28 4か国の日本滞在中利用宿泊施設 日本滞在全期間】 (出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018)

【図28 4か国の日本滞在中利用宿泊施設 日本滞在全期間】
(出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018)

インバウンド客の宿泊施設選定:奈良を大阪や京都と比較

さて、それでは奈良での実態はどうでしょうか?2018年の年間の宿泊者数の1人あたり宿泊単価の分布を大阪や京都と比べながら見てみましょう。いやー、奈良では中国人の宿泊が一番多いといっても、絶対数はやはり大阪や京都の1割台以下ですね。

【図29 4か国の金額レンジ別奈良・大阪・京都宿泊単価/人】 (出典:観光予報プラットフォーム)

【図29 4か国の金額レンジ別奈良・大阪・京都宿泊単価/人】
(出典:観光予報プラットフォーム)

このデータからすると、大阪や京都に比べ、高級宿泊施設が少ない分、3万円/人以上の分布は少なくなっていると思われますが、それでも1万円から3万円/人までの宿泊客割合が奈良でも多いことがわかります。米国人の場合、逆に1万円未満の人が少ないですね。では、どの形態の宿泊施設を多く利用しているかも念の為見ておきましょう。

【図30 4か国の3府県滞在中利用宿泊施設割合 】 (出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018)

【図30 4か国の3府県滞在中利用宿泊施設割合 】
(出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018)

うーむ。このデータ、国別データがないので各国ミックス平均になっていますが、前述の全国の構成から大きく逸脱してはないようですし、また奈良は大阪や京都と比べても施設形態の選定が異なるわけではないと言えますね。

そしてここに、面白いデータがあります。
日本政策投資銀行が関西に来ているインバウンド客からアンケートをとったもので、中国、アジア、欧米豪で、宿泊地選定動機を尋ねたものです。
これによると 観光地へのアクセスを優先する[*3]というのが全世界共通平均の基準であることはわかりますが、中国人の宿泊地選定基準に「レストランが多い」や「ショッピングが楽しめる」ところが強い選定基準に入っており、奈良が“大阪に比べ”、中国人から宿泊地に選定されにくい理由になっていると思われます。[*4] ただ、もしかすると立地の問題はむずかしいですが、自然が豊かな場所、近い場所にある施設は中国人も呼び込めるチャンスはありそうですね。

【図31 宿泊地決定時重視要素 単位は回答率%】 (出典:日本政策投資銀行2018年6月実施関西のインバウンド観光動向アンケート)

【図31 宿泊地決定時重視要素 単位は回答率%】
(出典:日本政策投資銀行2018年6月実施関西のインバウンド観光動向アンケート)

前置きが長くなりましたが、以上のことから、国によって選定基準の差はあるものの、1万円/人・泊以上の価格帯の需要もしっかりとあることから、価格競争に陥らないでお宿のブランディングを考えて行く余地が奈良の地においても十分にあるのではないでしょうか?

価格競争を避けよう

現代風の住宅での民泊、ビジネスホテル、ドミトリータイプでは、ホストによるサービスの違いは別として、なかなか差異化がしにくく、施設数が増えれば増えるほど価格競争が熾烈化するでしょう。客室数を多く抱えられるホテル様でも集客をBooking.comなどのオンライン予約サイト(OTA)に任せっぱなしで外国語顧客レビューの分析と改善を敬遠しておれば、いずれ価格競争だけでしか生きていけなくなるかもしれません。[*5] 是非頑張ってご自分の施設の“特徴”を再発見しましょう。
古民家を改装したり、お庭がきれいだったり、お風呂が特徴的だったり、食事に自信があったり、体験を提供できたりという特徴をビジュアルとメッセージでうまく伝えられたら非価格の比較要素をお客様に与えることができます。これらをしっかり定めて、伝えられる写真を多く用意し、キーメッセージを考えましょう。(よろしければ当協会へもご相談くださいね!)

個人客の宿泊予約動線を知ろう

インバウンド個人客の宿泊先検討の手順はかなり明らかにされています。Googleなどの検索エンジンでとりあえず「hotel」と「地名」で検索される方が圧倒的に多いのです。
前述のBooking.comなどのオンライン予約サイトは、この検索に対してどの地名でやってもGoogleのトップページに自社のサイトが表示されるようかなりの広告費を使っています。開業したてや認知度がまだ低い施設様にとっては、オンライン予約サイトのこの露出度は助けになります。
但し、一旦オンライン予約サイトサイトに顧客が跳んだとしても、宿泊施設の場合、館内や立地、部屋や浴場の写真などをよく見ておきたいというニーズが強く、Googleマップやトリップアドバイザー等からさらに施設の公式ホームページを見に来られる方が結構多いことが判っていますので、前述しましたように自施設の良さを再定義し、公式ホームページやトリップアドバイザーでのアピールをきちんとやりましょう。そしてここにこそ、直接予約(ダイレクトブッキング)獲得へのヒントがあります。

オンライン予約サイト手数料削減、直接予約獲得への道のり

前述しましたようにオンライン予約サイトとの契約を辞める必要はありませんし、彼等のサイトを利用しての認知度維持は必要です。
ただ、オンライン予約サイトだけに依存していると、宿泊後の評価・レビューはオンライン予約サイト側に書き込まれ、原則彼らの資産となってしまいます。
自施設の個性・特徴・自慢できるところをどう作り上げたり強化したりできるかを画像やメッセージで表現し、英語ホームページに反映させ、部屋などを確認しにホームページに来訪したお客にアピールしましょう。
アピールのポイントは、「オンライン予約サイト価格と同価格を保証し、さらにアメニティや食事やドリンク1品、または体験などの非価格特典を追加」するのが良いと考えます。
直接予約用に別途自施設専用の予約サイトを構築するか、またはそのような仕組みを持つ業者と契約し[*6]、ホームページからそちらへリンクを貼りましょう。
実際にお客様の予約が成立しましたら、なるべくメールで温かみある御礼文と宿泊当日や前後にあるイベント情報などをお知らせしてあげると喜んでもらえますし、延泊獲得チャンスも出てきます。
来館日とチェックアウト時には必ず女将さんやご主人がご挨拶されたり、別れ際に一緒に写真を撮ったり、「エンジョイしていただけましたか? Did you enjoy your stay?」とお尋ねになり、イエスと言っていただけたら(トリップアドバイザーやグーグルマップへ)レビューを書いていただくお願いするカードをお渡ししたりするのがよいと思います。
直接予約のお客様には是非そのメリットをレビューに書いてもらうとよいですよね。レビューが入れば是非お礼のお返事を定型文でも良いので英語で覚えて書きましょう。そうやってレビューが増えると好循環が始まります。
是非チャレンジしてみてください。以下は今回のお話を簡単なフロー図にしたものですのでご参考にしてくださいね。

【図32 宿泊業様の直接予約獲得に向けたフロー図 】(当協会作成)

【図32 宿泊業様の直接予約獲得に向けたフロー図 】(当協会作成)

[*1] 第1回、第2回コラム“どこのお国の方が奈良ファンなの?”をご参照ください。
[*2] 観光庁が特別にトピック分析として、この有料での住宅宿泊(民泊)の利用者と非利用者の特性の違いを、国別や滞在県別に調査している資料があり、こちらもなかなか面白いです。
観光庁・訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】「有償での住宅宿泊」利用観光客の詳細分析
[*3] 他の回でも述べましたが、高野山へ行くルートを奈良市や奈良中部経由で推奨することで、大阪や京都で泊まる方々を奈良泊に誘導できる可能性があると当協会では考えています。但し、具体的な過ごし方や交通等の情報提供をしないと、安心して新ルートを選んでいただけませんので、これからまだまだ多くの関係事業の方々を巻き込んでいく必要があります。
一般社団法人ウェルネスインバウンド協会「The best Nara itinerary」
[*4] 外務省は2019年1月から中国人へのビザ発給要件を更に緩和し、これまで旅行社主催団体ツアーでしかビザを取得できなかった人々(特に大学生)が個人旅行でのビザ取得をできるようになったため、これまで数時間しか奈良に滞在しなかった団体旅行からよりゆっくり奈良に滞在してもらえる中国人が増える可能性も考えらえます。
[*5] 価格変更は季節による調整は当然必要ですが、本来の自施設の価値や強みで勝負できるのであれば、その内容と競合するような近隣施設等の価格を参考にすればよく、それで一旦ポジションを決めたらオンライン予約サイト価格でまずそれが守られるように監視しないといけません。半年以上先の事前決済予約などの早割は別として、何の条件・理由もなく値引をしたりするような施策はブランド毀損になりかねません。
[*6] 最近はグーグル検索やグーグルマップ上で直接複数のオンライン予約サイト価格比較ができるようになってきています。またここに、オンライン予約サイトより低い手数料で自社直接予約レートと予約リンクを掲載することもできるようになってきています。直接予約(ダイレクトブッキング)を増やしていくには、こういう場所に自社予約入口を置くことはかなり効果的ではないかと思います。もちろんオンライン予約サイト価格をコントロールしたうえで、これと同額となる設定が必要です。

次回予告

今回も通読ありがとうございました!次回テーマは、“よい評価とおもてなしは、結局「人」の問題”の予定です。
現場におけるインバウンド接客は結局「異文化を理解しようとする心」を経営者の方自身が持ち、働く方々に同様に動機づけていくことが大切で、これが評価にも影響し、成功の重要なポイントとなるのでは?
また、一緒に考えていきましょうね!

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