インバウンドフレンドリー奈良を目指そう! 第8回:京都のような観光公害に奈良もなるの?(その2)

京都のような観光公害に奈良もなるの?(その2)

第8回:京都のような観光公害に奈良もなるの?(その2)

みなさん、こんにちは!
今回は、前回の「観光公害」テーマの続きです。
(前回未読の方は下のリンクから)

「観光公害」、最近メディアも騒ぎ立ててますね。
日経ビジネスさんは、「舞妓パパラッチ」(京都の舞妓さんをストーキングして撮影)の話や、アニメ“スラムダンク“のシーンで有名になった鎌倉江ノ電の踏切などを題材にされ、また、産経ビズさんでは、大阪梅田の中崎町を若い方がおしゃれな店舗で活性化させた結果、インバウンド人気となった一方、住んでいる人で苦情を言う人が出てきたという記事が掲載されていました。[*1]
各メディアの記事を見ていると、「観光公害現象」の例を挙げることに字数や紙面を使い、観光推進者と反対者、または推進案と抑制案をどのような議論アプローチで仲裁していくのが良いのかのアプローチ部分が薄いような気がしますが。。。

ならまちを例にとって考えよう

今回は、ならまちを例にとり[*2]、論点を明確にしたうえで観光活性化とマイナス面の抑制バランスの在り方を考えてみたいと思います。明確にしておきたい論点は以下のとおりです。

1)海外の方から“ならまち”はどう認知されているのか、好まれている魅力・ポイントは何なのか?国によってそれはどう違うか? ➡ これを確認することにより、「引き続き海外の方に良さを味わってもらうために大切にしなければならないこと」が判るはずです。
2)ならまちの良さを維持しつつ、観光消費振興をしていくにはどうすればよいか?どうすれば、観光公害(マイナス面)を抑制しつつ進めて行けるか?

奈良に多く来ている外国人(おさらい)

さて、みなさん、第1回のコラムを思い出してください。奈良に多く来ている欧米人、アジア人はどこの国の方たちだったでしょうか?覚えてますか?

答え)欧米人トップスリーは、米国、フランス、オーストラリアでした。
アジア人では、中国、台湾、韓国でしたね!

【図21 主要国からの奈良訪問率・平均泊数・想定訪問者数】 (訪問率および泊数データ出所:観光庁訪日外国人消費動向調査2018、訪問者数は、日本全体への国別訪問者数に県別訪問率を乗じて出した想定数)

【図21 主要国からの奈良訪問率・平均泊数・想定訪問者数】
(訪問率および泊数データ出所:観光庁訪日外国人消費動向調査2018、訪問者数は、日本全体への国別訪問者数に県別訪問率を乗じて出した想定数)

メディアでのならまちの評価を見てみよう

奈良へのトップ訪問人数を占めるのは中国人です。日帰りも宿泊も訪日外国人の6割以上を占めています。[*3]
このうち、団体の比率は宿泊ベースで約45%程度と考えられます。つまり個人旅行者が案外多いのです。中国大陸からの個人旅行者は、ビザ緩和の影響で今後も増え、代わりに団体旅行グループは減る見通しです。では、中国人個人旅行者の好みを彼らがよく使っているサイト、“穷游”(チョンヨウ)[*4]で確認してみましょう。

【図22 穷游 での奈良紹介ページにおける人気訪問地一覧 】(2019年6月時点)

【図22 穷游 での奈良紹介ページにおける人気訪問地一覧 】(2019年6月時点)

このとおり、ならまちはトップページで紹介されています。
具体的な評価ではどうでしょうか?同じく個人旅行者の情報サイト“蚂蜂窝”(マーファンオー)でのならまちの説明[*5]は以下のとおりです。中国語の紹介文を翻訳しますとこのようになります。

奈良町は奈良で最も特徴的な小道の町で主要な商店街の一つ。通りの両側には江戸時代の様々な建物が並ぶ。狭い通りには伝統的な昔ながらの家が並び、そのスタイルは趣あり落ち着いていて、ゆっくり過ごすとタイムスリップ感を体験できます。日中は、さまざまなレストランや専門店が賑やか。夜には観光客は居なくなりますが、暗い照明には古めかしい街並みが映えていて、独特の味があります。

【図23 蚂蜂窝における 奈良町の紹介ページ】(2019年6月時点)

【図23 蚂蜂窝における 奈良町の紹介ページ】(2019年6月時点)

ここ“蚂蜂窝“に投稿されている訪問者の評価を見てみましょう。

【図24 蚂蜂窝における 奈良町の評価レビュー投稿例】

【図24 蚂蜂窝における 奈良町の評価レビュー投稿例】

これらレビューのポイントをまとめますと以下のようになります。
レビューのポイント

  • 人が少ないので、ゆっくり回れ、邪魔なしに写真を撮れる。
  • 古風、静か、落ち着いてる。
  • 風景、夕日がきれい。夜の薄暗さでの散歩も良い。
  • 民家と混じっているので、写真を撮るべきでないところがわかりにくい。

次に、同様にして トリップアドバイザーで英語圏とフランス人について確認してみましょう。

トリップアドバイザーでは、2019年6月現在、奈良での訪問地ランキングでならまちは13位です。[*6]

【図25 トリップアドバイザーにおける 奈良町の英語評価レビュー投稿例】

【図25 トリップアドバイザーにおける 奈良町の英語評価レビュー投稿例】

上記以外も含め、英語投稿のレビューのポイントをまとめますと以下のようになります。
レビューのポイント

  • 家と通りに赴きがある。散策によい。
  • 狭い道にある地元経営の店で買い物可。昔の日本を感じられる。
  • 奈良公園周辺と比べそれほど混雑しておらず、ゆっくりと回れる。

それでは、フランス人ではどうでしょうか?

【図26 トリップアドバイザーにおける 奈良町の仏語評価レビュー投稿例】

【図26 トリップアドバイザーにおける 奈良町の仏語評価レビュー投稿例】

レビューのポイント

  • 古い時代を思わせる町中を散策するのがよい。
  • 日本の古民家の意匠を鑑賞できる。
  • 奈良公園周辺と比べ比較的静かな場所。観光客がそれほど多くない。

面白いことに、中国個人旅行者も、英語圏欧米人もフランス人も、ならまちの評価ポイントはほとんどおなじですね!
町並みが古くて(感じが)よい、とか古民家鑑賞ができてよい、地元のお店がよい、といった点は、より魅力を出す方法やコンテンツを考え、宣伝・認知強化していきたいところです。(前回申し上げたように、ならまちでのお店来客数改善の余地はまだ多いという商店主様実感強い)
ところが、一方で、「奈良公園に比べて人が少なく、静かなのが魅力」という評価ポイントはジレンマであります。なんせ観光客の方々がある意味「自分と同時間帯に他の多くの人には来てほしくない」と言っているのと同じですから。混雑するとならまちの魅力そのものが失われてしまうのです。

ならまちの課題と観光振興の方向性

以上より、ならまちの課題が見えてきました。

  • 団体観光客の見学ルートとして大々的にアピールするのは良くない。
  • 大がかりで大勢の集客を一時に見込むようなイベントも似つかわしくない。

こういうことが言えるわけですから、個人旅行客が情報収集しているサイトにのみ働きかけ、ならまちの良さである、

  • 狭い路地・築100年の町家・博物館などの魅力
  • 昔の日本を感じるレトロ感
  • 地元経営の(個性豊かな)店でのショッピング・飲食

発信していくことが重要なのだということではないでしょうか。
また、特定時間帯での来訪集中を抑制するには、以下のような時間と季節の分散施策の更なる検討余地があるのではないかと思います。

  • (場所を限定する必要があるかもしれませんが)お店の営業時間のシフトまたは延長を検討する。(ならまちの場合は、朝より夕方・夜散策の動機が強そうですので、この時間帯の散策魅力を多く発信したいところです。)
  • 冬場等閑散期については、“くらし・伝統体験(冬は暖あり)”でキャンペーンを行うなど、室内で風情を感じることのできる企画を多く、かつインバウンドの方に予定に組んでもらいやすくするため、曜日や時間帯を一定に決めて行う情報発信努力が必要かと思います。

以上、結果的に、ならまちは観光公害が目立つ以前に、来訪者数を自ら平準化する努力をより積極的に行わないと、観光消費と人気度維持のバランスがとれないことが判りました。(結局、この努力は混雑による観光公害を予防すること同じ施策になるはずですね!)
これってよく考えてみると、実は、日本全国の風情ある落ち着いた観光地でも言えることですよね!

綺麗に改修された町家で営業されているお店が増えていますが、町家改修には通常の店舗改装以上の多額コストがかかり、その回収の為ということでも家賃はさぞかし高くなっているのではと思えます。町家で営業される店主様がより安定した経営を継続されるためにも、歴史的景観保存地区でのお店の稼働を如何にしてさらに活性化していくか、上記の枠組みの中でより多くの発案が必要ですね。私たち協会も頑張ります!

[*1] 日経ビジネス記事「日本むしばむ「観光公害」訪日客6000万人は幻か」(全文通読には有料アカウント要)
Sankei Biz「大阪の下町が悲鳴 インバウンド急増が生む観光公害」
[*2] “ならまち“という地名は行政区ではないため、領域定義がはっきりしておりません。大和郡山市に行政区としての”奈良町“があり、海外からも混同されているくらいです。現在、奈良市はこの名称を拡大解釈するようにして、かなり広範囲な地域として活性化をしようとしています。しかし、今回の考察で判るように、”Naramachi”に対する海外の方々からの印象は、町家の街並みやレトロ感がベースになっており、これらを保全できている街区である中新屋町や芝新屋町周辺への評価であると考えざるを得ません。
[*3] ただし、現在は、中国人の奈良での観光消費額は、一人1回あたり11,000円(2018年観光庁データ)であり、非常に少額です。同じく観光庁統計では、彼等の消費対象は、日本食、買い物が中心ですので、この領域で彼らの購買意欲に遡及するものを考えて行く必要があります。その中でも例えば奈良の漢方薬やコスメは非常に評価されているものの一つです。
[*4] 穷游での奈良紹介サイト
[*5] 蚂蜂窝での奈良町紹介サイト
[*6] トリップアドバイザーでの奈良市観光スポット紹介ページ
7月には11位にランクアップしてました!

次回予告

さて、次回のお題目は“日本の個性ある旅館こそ、直接予約で勝負だ!”です。
部屋数がそれほど多くないけれど、非常に建物や館内の意匠、部屋や庭、お風呂、食事にこだわりや美しさがあり、それらを強みとして打ち出せる旅館は多いです。しかし、Booking.comなどのオンライン予約サイト(OTA)に集客をまるっきり依存しているところもまだまだ多いのでははないでしょうか?
このような旅館様が、OTA依存から少しでも脱却し、自ら認知度を向上し、その結果として自社予約(ダイレクトブッキング)比率を上げていくためのアプローチを考えてみたいと思います。

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