インバウンドフレンドリー奈良を目指そう! 第6回:ベジタリアン・ビーガンの定義ってどうなってるの?

ベジタリアン・ビーガンの定義ってどうなってるの?

第6回:ベジタリアン・ビーガンの定義ってどうなってるの?

みなさん、こんにちは!
今回は、お題にあるとおり、ベジタリアン・ビーガンの観光客の方々についての話題です。
(第5回のコラム未読の方は以下のリンクから)

ベジタリアン(菜食主義者)というのは、皆さんよく聞かれますよね?。一方で、「ビーガンって聞いたことあるけどベジタリアンとどう違うん?」と思われておられるかたもいらっしゃるのでは?
最近は、「食事制限(dietary restrictions)」の種類も増えて、他にもグルテンフリーなど多彩に制限の種類が増えてきています。これに加えて、宗教上食事が制限されているイスラム教のハラルやユダヤ教のコーシャなどへの対応を勧める声も聴かれます。
今回は、主にベジタリアンとビーガンの“定義”について(どこまで明瞭なのか)確認し、そして、実際の海外からの旅行者の方々が、対応飲食店や旅館などをどのように探し、そして食事をされる際どのようにやりとりをしていけばよいのだろうか??ということを考えてみたいとおもいます。

ベジタリアン、ビーガンとは?

さて、それでは早速言葉の確認をしてみましょう。まずは、国際的な機関がこれらの言葉をどのように取り扱っているかを確認してみます。
多くの国のベジタリアン関連団体が加盟している“国際ベジタリアン連合(International Vegetarian Union 略称IVU)”でのベジタリアンの定義[*1] (当方による日本語訳)は以下のとおりです。

“ベジタリアン(菜食主義)とは、植物由来の食物に食事を制限することを言う。乳製品や玉子、はちみつなどを認める場合とそうでない場合がある。”

乳製品などがOKの場合とそうでない場合があり、国や宗教によっても異なるようですね。
さらにこの機関におけるビーガンの定義はというと、こうなります。

“ビーガンとは、全ての目的においていかなる動物(含む昆虫)関連の製品を使わないことであり、肉や乳製品、玉子、蜜なども禁じ、皮やシルク、羊毛、ラノリン、ゼラチンも使用を避け、スポーツや実験、展示やショー等での動物の利用、鑑賞も行わないことを言う。”

この定義、びっくりですね。これだと奈良で売ってる鹿角を使ったペンやアクセサリー、鹿革の汚れ拭きなどもアウト、さらに鹿の角きり行事もアウトということになってしまいます。さらには動物園に子供もつれていけないし、シャチやあしかのショーも見ないということになりますね。
但し、実のところは、(先ほど乳製品の可否が判れることがあると書いたように)ベジタリアン・ビーガンそれぞれにおいてもう一段細かくグループ分けされています。これら以外にも細かい呼び名のものが多くありますが、それを全てまともに覚えようとしてもあまり意味がありませんので主要な分類のみ揚げてみます。(図14)

ベジタリアンの詳細分類の代表例
オボ・ラクト・ベジタリアン
Ovo-Lacto Vegetarian
卵と乳製品が食べられる菜食。欧米に多い。
ラクト・ベジタリアン
Lacto Vegetarian
乳製品が食べられる菜食。インドに多い。
トータルベジタリアン
Total-Vegetarian
完全に植物しか食さない。北アメリカに多い。
ペスカタリアン
Pescetarian
魚類肉が食べられる菜食。
フルータリアン
Fruitarian
植物自体の生命を奪わずに、果実のみを食べる菜食。
ビーガンの分類
ビーガン
Vegan
いかなる動物(含む昆虫)関連の製品を使わない。肉や乳製品、玉子、蜜なども禁じ、皮やシルク、羊毛、ラノリン、ゼラチンも使用を避け、スポーツや実験、展示やショー等での動物の利用、鑑賞も行わない。
ダイエタリー・ビーガン
Dietary Vegan
食事のみにおいて動物由来のものを食さない。

【図14】出典:International Vegetarian Union

世界でベジタリアン人口が増加

農林水産省が作成した「飲食事業者のためのインバウンド対応ガイドブック」[*2]で、世界のベジタリアン人口が事務局によりまとめられています。(図15)
これによるとインドで40%、台湾で13%、スウェーデン、イタリアで10%と非常に人口に占める比率が多い国があり、また徐々に増えているということです。
中国では5%、米国で3%ですが、絶対数に換算すればかなりの人数ですよね。このコラムの第1回でも奈良には中国、台湾からの訪問率が多いと申し上げましたが、そうなると飲食業の皆様もそれなりの対応が必要と言えるかもしれませんね。

【図15】農林水産省「飲食事業者のためのインバウンド対応ガイドブック」P27 より抜粋

【図15】農林水産省「飲食事業者のためのインバウンド対応ガイドブック」P27 より抜粋

ベジタリアン・ビーガンなどの観光客への対応

海外からのお客様にはどのように対応していけばよいのでしょう?第4回のコラムで書きましたように、まずは自分のお店を認知してもらうこと、見つけてもらえることが大事でしたね。
飲食店様で、いくつかのメニューで、ベジタリアンやビーガンの方々にお勧めのものを出せるところであれば[*3] 、まずはやはり、トリップアドバイザーやグーグルマップスでベジタリアン対応していることをカテゴリ登録しておくことが大事だと思います。[*4]
また、ハッピーカウ(Happycow)[*5] というベジタリアン・ビーガン専門のお店紹介ウェブサイト(米国)があり、訪問された方がどんどんお店を登録してくれています。奈良のお店も既に相当数掲載されていますよ。

さて、次に、ちょっと和食についてベジタリアンやビーガンの方とのコミュニケーション方法について取り上げてみます。
なぜ和食かというと、ベジタリアン・ビーガンであるインバウンド客の場合、「ユネスコ無形文化遺産に登録された和食を試してみたい」という期待と食事制限が見事に矛盾を起こすからです。
どういうことかといいますと、和食店様や旅館様でお食事を出される場合の予約時などによく「かつおだしは無理なので使わないでもらえないでしょうか?」とベジタリアン・ビーガンのお客様から言われることがあります。
板長さんがどこかの有名どころの門派の方ですと、そもそもかつおだしを使わないような味付け自体を拒絶されることもあります。
柔軟な板長さんやオーナー板長さんであればしいたけや昆布だしで代用されたりしますが、「かつおだしこそ和食の真髄で、その旨味でこそはじめての和食体験で是非味わってほしい」とい思いも強いようです。
一方で、場合によってはこの思いを(英語でですが)きちんと伝えると、理解を示してくれ、かつおだしだけは受け入れて食べてくださる方々もおられます。

また、実際の調理法や設備に関しては、イスラム教信者の方(ムスリム)等へのハラル対応のように調理設備・器具自体を分けなければいけないといったほどの厳格なルールはベジタリアン・ビーガン対応においては原則ありません。
例えば調理用の油ですが、植物油であれば、肉類を揚げた後に野菜天ぷらを揚げても基本的にはそこまで問いただされるようなこともないようです。 [*6]

そして、お客様入店時には、もちろん、食べられないものやOKのものを具体的に確認(予約された方でも改めて)するということに努めなければなりませんが、細かい英語等でのやりとりは大変ですね。
最近は、インターネットで自由に参照できる「指さし会話ツール」[*7] などもありますので、これを真似るなどすれば、食べられないものを把握することもしやすくなってきているのではないでしょうか?。

以上、今回のポイントをまとめますと、

  1. まず、ベジタリアンとビーガンの定義や詳細分類を一通り理解すること
  2. そして、この2つについては調理設備等での大きな制約がないので、どのように工夫すれば自分のお店等で対応メニューが出せるかを考えること(メニューにVEGIやVEGANマークをつけると良い)
  3. 対応準備ができたら、グーグルマップやハッピーカウなどで見つけてもらえるよう情報登録・整備を行うこと
  4. また英語ができるなら、かつおだしなどの基本調味料について理解を得る説明もしてみること(もちろん押しつけはいけません)
  5. 指差しツールで注文時も頑張って確認すること

ということですね。

ベジタリアン・ビーガン以外の宗教的な食事制限まで含めた留意点情報については、観光庁のホームぺージに「多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル」[*8] が紹介されていますので、こちらも参考にしてくださいね。さて、今回はここまでにしておきましょう。

[*1] International Vegetarian Union
[*2] 農林水産省「飲食店のための対応ガイドブック」
[*3] 前述のとおり、乳製品や玉子などのグレーゾーンのものは避けたほうがよいでしょう。
[*4] トリップアドバイザーでは現在オーナー側からベジタリアン対応の分類登録ができず、カスタマーレビューでその旨の記述が入ると分類に追加されるようです。一方でグーグルマップ(グーグルマイビジネス)では、業種に Vegetarian Cafe and Deli や Vegetarian Restaurant、および Vegan Restaurant がありますので、これらをサブカテゴリに追加してみてはどうでしょうか?。
[*5] Happy Cowで奈良のお店を検索した際の画面
[*6] ただし、メニューなどに「動物性のものの調理と同じフライヤーを利用している」といった一文を入れておいたほうが無難だという推奨もあります。
[*7] 筆者調べでは、東京都大田区が制作している「外国人おもてなし指差しブックレット」が非常に秀逸だと思いました。
[*8] 観光庁「多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル」

次回予告

次回第7回は、「京都のような観光公害に奈良もなるの?」というテーマを考えております。東大寺と奈良公園だけが人ごみで溢れかえり、その周辺だけが交通渋滞になるだけではまずいですよね。非常にスケールが大きなお話ですので絶対これだという正解はないかと思いますが、次回も是非私の話にお付き合いいただければうれしいです。

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