インバウンドフレンドリー奈良を目指そう! 第3回:インバウンドはなぜ奈良でお金を使ってくれないの?

インバウンドはなぜ奈良でお金を使ってくれないの?

第3回:インバウンドはなぜ奈良でお金を使ってくれないの?

皆さん、こんにちは!
このコラムも3回目ですね。前回は、奈良に多く来られている国の方々がどのようなメディアで日本や奈良のことを調べているのかを確認しましたね!

今回は、いよいよ奈良の一人あたり観光消費額が全国でも最低レベルであるとよく言われる点について、そのからくりと改善の着眼点について考えてみたいと思います。

奈良来訪主要国の消費額ついて

新聞などで報道される記事では、インバウンドと日本人旅行者のデータを合算・平均して評価しているものもありますが、私のコラムではインバウンドがテーマですから、まず対象をこれに絞ります。
かつ、取り沙汰されている「観光消費額」についてですが、ここでは「一人一回(来日)あたりの消費額」、つまり、“一回日本に来たら一人当たり奈良でどんなことにどれだけお金を使っているか”を他県と比較して見ることが重要かと思います。当然ながら、連泊すれば宿泊や飲食関連消費額はその地域で増加します [*1]。
それではこれまでご説明してきた奈良来訪主要国の消費額構成を眺めてみるところから始めましょう。

金額単位:消費単価は円、推定消費総額は百万円

金額単位:消費単価は円、推定消費総額は百万円

【図4 訪問率・平均泊数・消費単価比較 (出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018および訪日外客数2018)】 (表右側の奈良県の推定消費総額は当協会による試算値)

【図4 訪問率・平均泊数・消費単価比較 (出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018および訪日外客数2018)】
(表右側の奈良県の推定消費総額は当協会による試算値)

図4は、少し複雑に見えるかもしれませんが、縦軸に奈良訪問率が高い国とのびしろがある国を、横軸にベンチマークすべき他県の平均泊数と一人一回訪問当たり消費額を奈良と比較して並べてみました。
ベンチマークする県については、首都圏・京都・大阪や長期泊せざるを得ない北海道や沖縄を除いてから、さらに訪問率が高い国が共通しているか比較に値する県を選んでいます。
結果、一目瞭然ですが、折角奈良への訪問率が高い国の方々でも平均泊数が全くもって他県に比べ酷く悪いことがわかります。
消費額(消費単価)が低いのもこれにほぼ比例していると考えられます。
表の右側で、アジアについては福岡の泊数、欧米については広島の泊数を達成できたらと仮定して消費総額を試算してみると良い数字になりますのでやはり泊数不足が大きなハンデであるわけです。
よく見ると、欧米人の一人一回訪問当たり消費額は、アジアと比べ1泊あたりでは高めのようです。しかし、アジアの人々は数が多く、福岡並とは行かないまでも1泊か2泊してくれるだけで相当な消費額貢献を期待できます。

中国・台湾人の泊数改善の可能性

さて、中国人については、宿や移動手段を個人手配する人の割合が55%であり、毎年増加しています。
前回中国人がよく情報入手に利用するものに旅行社のサイトがあると申し上げましたが、馬蜂窩(マーファンウォ)という個人旅行者に人気のサイトで現在最も推奨されている周遊ルート [*2] が7日程度で京都・大阪・奈良を回るもの、またはこれに東京を加えて10日程度となっているものです。但し、周遊はすれど中国人の場合訪日の目的第一位が「買い物」(図5参照)ですので、宿泊は圧倒的に大阪や東京になってしまっているようです。この点からすると、中国人に奈良に泊まるよう動機付けるのはかなり難しいように思います。

【図5 日本全体平均主要国別・費目別購入単価((出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018)】

【図5 日本全体平均主要国別・費目別購入単価((出典:観光庁訪日外国人消費動向調査2018)】

台湾人については、4~6泊の滞在が7割(観光庁:2018年における訪日外国人の消費動向報告書より)であり、宿や移動手段個人手配でのリピーターが毎年増加、同報告書データでは2~5回目が約47%、6回以上が約36%となっています。
また、伴ってルートも完全に自分で決める個人での旅行手配率が約58%に達しています。滞在期間が短めですので1回でそれほど多くの箇所を回りませんが、例えばより地方に分散した、美しい自然のある山岳地などの宿泊地選択(検索)がなされていることが既に2017年の他事業者様の調査[*3]で判明しており公開されています。
奈良にも東部・中部・南部に美しい場所が沢山ありますから、facebook広告(もちろん繁体中国語でないといけませんが)などで地道に魅力を伝えていくことで人気を高める可能性も高まっていくのではないでしょうか?

欧米人のよく見るサイト・ガイドブックでも奈良の周遊提案がない・弱い

アジア人に比べれば、奈良の欧米人平均宿泊日数は多めですが、それでも他県と比べて非常に少なく、消費額も低いですね。訪問率が良い広島がベンチマークになると思いますが、地理的には奈良同様通過型(宿泊しない)観光地として見られてもよさそうな広島にはなぜ多くの欧米人がほぼ2~3泊も宿泊してくれるのでしょうか?
前回、私は米国人が旅前によく調べるメディアとして“トリップアドバイザー”を挙げましたが、日本全体で訪問場所のランキングを見る[*4]と広島の宮島や厳島神社、そして平和記念公園の露出度が東大寺を上回っていますね。
また、米国人のアクセス数が多いオンラインのガイドブックサイトであるLonely Planetでは、広島の周遊コース(itinerary)[*5]が以下のように推奨されており、前泊も含め確実に“2泊すべき”メッセージが伝わってきます。

  1. 前泊前提・・Andersen(ベーカリー)で朝食
  2. 平和記念資料館、記念公園や原爆ドーム見学
  3. 現代美術館やまんが図書館見学
  4. 昼食は お好み焼き
  5. その後、広島城や縮景園訪問
  6. 牡蠣亭での夕食とライブ・バーをお勧め・・・これで2泊目
  7. 翌日、宮島へ足を延ばすことも勧めている。

片や、Lonely Planetでの奈良のページに行く[*6]と、、、、あれ、itineraryのリンクがない・・・・。しかも、ページトップの文を読むとこのトラウマ的な記述が書いてある。
“Nara is popular as a day trip from Kyoto or Osaka – there’s just enough time to see the highlights.”(奈良は京都・大阪からの日帰りが人気、ハイライトを見るのにはその時間で十分。。)
しかも、明日香村や吉野は別ページで存在し、相互リンクもない状態
です。(2019年4月23日筆者確認時)

今後、協力してこういうメディアへ地道に働きかけ、バラバラ掲載のこれらの地域を周遊コースとしてまとめ上げ、露出度を上げていくこと、そしてそれに併せてこのトラウマ的記述を削除させることが急務だと思われます。

最後に、フランス人が旅行の調べものによく使うガイドブックにて、奈良がどう書かれているかを見てみましょう。
前回でとりあげたガイドブック Routard 2019年度版の28-31ページに、滞在期間別に全国をどう回るかの周遊コースが提案されています。
ここで奈良は、「日本に10日間以上滞在する場合の候補地として」掲載されており、京都から奈良へ、そして大阪経由高野山へとルートが提案されていて、この中で移動を含めて2日間奈良で過ごすことが提案されています!
実は裏話がありまして、このRoutardの2018年度版では、何と大阪が掲載されておらず、奈良も日帰りで京都に戻って泊まる提案がされていました!フランスからの認知は良い方向に動き始めているようです。しかし、奈良市の後に明日香、吉野や五條等を連携させ、高野山へ行くルートを奈良県としては提案したほうが、県内周遊をより魅力的かつ充実させて提案できるはずですね。
先日、ならまちで立ち話をしたフランス人カップルにこのことを話しましたら、「京都や大阪に泊まりに戻って高野山に行くより、奈良中部経由のほうが効率的で楽しそう!」と答えてくれまして少し救われた気がしました!

以上、買物場所での宿泊をより重視していると考えられる中国人以外であれば、奈良に興味を持って下さる国の方々、そして彼らの閲覧するメディアにターゲットを絞り、そこで目を引くコンテンツ、景色、周遊コースを提案できるようにすることで宿泊推奨が得られる可能性が高まるということが今回判りましたね!これを当協会も奈良ネクスト推進協議会さんや奈良県の皆さんと「共創」していければと願います!

[*1] 宿泊業関係の方からすれば、「宿泊費単価はどうなの?高くとれているの?」という点のほうが気になるかもしれませんが、拠所となる観光庁の「一人一泊当たり単価」は奈良不泊の人も分母に入れて平均を出しているので実態レートではないことに注意する必要があります。
[*2] 馬蜂窩 日本推奨周遊ルートページ
[*3] アウンコンサルティング発表 訪日台湾人のトレンド調査
[*4] https://www.tripadvisor.com/Attractions-g294232-Activities-c47-Japan.html
[*5] 出典:Lonely planet Hiroshima itinerary
[*6] https://www.lonelyplanet.com/japan/kansai/nara

次回予告

さて、宿泊を増やすにはもちろん、飲食のインバウンド対応充実も欠かせません。
次回は、「インバウンド客は食事場所をどう決めるの?」のお題で、各国人の好き嫌いや、彼等の飲食店選択の流れを追ってみましょう。

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